講師コラム スタートします。 シリーズ1 は、 当学院の講師でも有る 「津田美佳」先生です。
津田美佳>> 表現音楽療法士 M.A. in Expressive Therapies, Music Therapy & Mental Health Counseling Specialization「赤ちゃんと同じ目線で向き合うって難しい」と思っていらっしゃるお母さん方へ。
一度、みなさん自身が、“赤ちゃん”になってみませんか。今赤ちゃんがいらっしゃるお母さんは、赤ちゃんに合わせて一緒に泣いたり笑ったり怒ったりしてみてください。小さなお子さんがいらっしゃるお母さんは、お子さんと“赤ちゃんの物まねゲーム”にトライしてみてください。その後、どんな気持ちだったかを、お子さんと一緒に話し合ってみてください。このとき、お子さんの話す一字一句を心から聴いてあげてください。今まで我慢してお母さんに話せなかったことが、一気に出てくるかもしれません。
続いて、お母さんがどんなことを感じたかをお子さんに話してあげてください。そして最後には、お互いがお互いを大切に思うことを確認するように、お子さんとぎゅっと抱きあいましょう。こうすることによって、お母さんとお子さんの間で何かが優しく変化することを感じ取れるはずです。心と体がすっきりと浄化され、まっさらな1人の人間として生まれ変わった自分との出会いを感じることでしょう。また、お子さんとの絆を改めて心からよろこび、感謝する思いで胸がいっぱいになるはずです。
「自分を表現すること」は、意外にも難しいと感じる方も多いのではないかと思います。“赤ちゃんになること”を「思わず噴出してできなかった」、「なんだか馬鹿らしく思えてできなかった」と思った方もいらっしゃるかもしれません。それでもいいのです。どの思いにも正誤や優劣はありません。どの思いもまっすぐに受けとめるべき真実です。今ここにある真実は、その“思い”こそ、自分の内面やお子さんに向けられた思い、そしてご自分の日常を映しだす鏡であるということです。“思わず噴出した”お母さんは、いつも物事を楽しんで考えられる方かもしれません。“馬鹿らしいと思った”お母さんは、自分の感情と向き合うことに慣れていらっしゃらないだけなのかもしれません。心の内面を表現することは、必ずしも心地のよいことではありません。「向き合いたくない」「知りたくない」問題が表に出てくることもあります。しかし、「表現する」ことを恐れず自分と向き合うことによって、初めて本当の自分を知ることができ、将来おこりうる試練に立ち向かう備えができるのです。そして、自分を表現することによって客観的に自分を知り、ひいては心身のバランスを保っていくことができるのです。
このように、「自分を表現すること」は、心と体の健康を保つための大切なプロセスです。大人は、言葉を使って自己表現することに長けています。しかし、言葉は必ずしも心の奥底を映しだしてくれるとは限りません。時には本当の気持ちを上手く包み隠すためにきれいな言葉で無意識に繕ってしまうこともあります。大人は人生経験の豊かさに比例して心や体の仕組みが複雑になる分、子どものようなまっすぐな自己表現が苦手といえます。もしかして、まっさらな心と体を携えて生まれてきた赤ちゃんこそが、自己表現のエキスパートかもしれません。おなかが空いたから泣く、嫌だから顔をしかめる、うれしいからキャッキャと笑う、楽しいから手足をバタバタさせる…伝えたいことを声や顔や体を使って全身全霊で表現できるのですから。言葉を知らなくても、思いを伝えることができる赤ちゃんは、言葉に頼りきっている私たちに、本来の人間らしさ、人間的なコミュニケーションのあり方を教えてくれているのです。
私が現在行っている表現音楽療法では、表現アートと呼ばれる、音、絵、体の動き、イメージなどの表現方法を使って、自分の奥底にある思いを引き出していく作業を行います。評価や判定などの行われない自由な空間の中で、表現アートの力を借りながら自分の心や体に意識を向けていきます。表現音楽療法の中で生まれる音や絵や体の動きなどは、すべてが心や体が伝えたい真実として受けとめられます。また、表現音楽療法では、赤ちゃんの自己表現のシステムや母子関係に似た技法がたくさん使われます。例えば、一定の安定したリズムで太鼓を叩き続けることで、母胎の鼓動が持つ安心感を促したり、「あー」や「うー」といった声から音楽を創り、人間の持つ原始的な呼応を引き出したりといった活動があります。それらは、お子さんの自由に遊ぶ姿を遠くから温かく見守り、無条件に優しく受けいれてあげる母親の姿に重なるのです。
次号からは、母と子の表現音楽療法が具体的にどのような目標に向かってどのような形で行われているかをご紹介しながら、音や絵や体の動きなどを使ってどのように豊かに自分を表現していけるかをお話ししていきたいと思います。お楽しみに!
子育て情報誌『はっぴーママ 東京ベイ・千葉版 NO.14』(明光企画)に掲載済
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